A先生からの震災近況報告

VegeetaM2011-05-27

 大型連休に災害ボランティアへ一緒に行った元同僚A先生は、5月9日から宮城県へ東京都からの派遣教員として赴任している。昨日、そのA先生から手紙が届いた。A先生の赴任したH中学校は、地震で倒壊の危機にあり校舎が使えず、近隣の3校へ学年ごとに分散して授業を行っている。技術科のA先生は、月・火がN中で3年生を、水・木・金がM中で1年生を教えている。赴任直後の1週間は、疲労から帰宅早々布団にもぐりこんだという。しかし、14日(土)は東松島のボランティアセンターで土嚢詰めを。21日(土)は派遣された先生を誘って石巻ボランティアセンターで壊れた食器棚・冷蔵庫、濡れた重い畳・布団、ガラス片の混じった泥等を家から出す作業に汗を流したとのこと。文末に「教師の仕事とボランティア活動、どちらが本業なのか…共に充実した日々を過ごしています。」とあった。タフで心やさしいA先生らしいなと思った。

鎌田慧『日本の原発危険地帯』

 紀伊国屋書店鎌田慧の名を見つけ、『日本の原発危険地帯』を手にとった。私にとって鎌田慧といえば『自動車絶望工場』が鮮烈なイメージとしてある。「派遣」というコトバが一般化していない時代のベルトコンベアーを前にした「疎外された労働」を描いた季節工のルポであった。『日本の原発危険地帯』の初出は1982年であるから約30年前に刊行されたものである。古い資料ではあるのだが、原発建設当時のカネでゴリ押ししていく姿を読み取ることができる好著である。それにしても福島第一原発は、建設当初から「被曝者」を産む問題原子炉であったようだ。もっと早くに私たちが声をあげ運転停止に追い詰めることができていれば…


○美浜第一号機の建設は「万博に原子力の灯を」を合言葉に突貫工事ですすめられた。
○既成事実の積み上げとあきらめの拡大である。一基つくられてしまえば、あとの危険性はおなじようなものだ、
○この小さな湾に取水口がつくられ、1日30トンの水が原発に吸いあげれるようになって潮流が変化したばかりでなく、プランクトンまで吸い込まれ、ナマコ、カキ、それに彼自身「日本一」と自慢した真珠貝まで絶滅してしまったことを嘆いたのだった。
○「高速増殖原型炉計画の概要」には、「仮に事故が起こったとしてもその事故による影響を最小限にくい止め、一般公衆には被害を及ぼさないことを… 基本的な方針として設計を行っております」と記されている。
福島県の相双地域(浜通り地帯)は、太平洋と阿武隈山系に挟まれた幅のない平地で、水資源に恵まれず、海岸線は50メートル程の絶壁となっており、戦後の過疎化の進行が激しく「福島のチベット」とも言われたところであります。
○浪江・双葉・大野・富岡、これらの駅は上野への通過駅でしかない。それは、ここでつくりだされた電力が、そのまま東京へ直送されるのと、どこか似ているようだ。
○第一原発の敷地面積約350万?のうち、3割弱は堤康次郎の所有地だった。それが用地買収を簡単なものにしたのだった。原発予定地の海岸側は民有地、内側は堤の所有地となっていたのだが、かつてこのあたりは、熊谷飛行隊の「磐城飛行場」だった。
○71年9月から79年2月までで、ガン、リンパ腺腫瘍、心臓マヒなどで死亡した原発内労働者は29名に達し、その後も被曝労働者の死亡は増えているとのことである。ただ、農村部であるため、原発下請労働者が被曝の疑いによるガンや白血病で死亡しても、遺族たちは風評をおもんばかって隠す傾向にある。…彼らは被曝手帳さえ渡されていなかった。小頭症で死産した嬰児が二人いた、…
○78年に納入された大熊町の町税は19億2千万円である。このうちm東電からの法人税、町民税、固定資産税、電気税など、いわゆる「原発関係税」は、17億円に達している。町税収入に88.5%が原発によって支えられている。
○この1号炉は71年に稼働してから平均稼働率は30%でしかなく、双葉地方原発反対同盟によれば、「被爆者製造炉」ということになる。
○独占体としての電力会社が、コストアップ分を電力料金に上乗せしてこれまでの膨大な建設資金を捻出してきた
○「ゴミを捨てないで下さい。自然環境を守りましょう 日本原燃サービス」 核のゴミを捨てる会社が、小さなゴミを禁止する。放射能をまき散らす会社が自然環境について説教する。… 一人を殺すと殺人罪、百人殺すと英雄になる、とか。
原発は心配といえば心配である。しかし、地元にはかくかくしかじかの利益があります。… 危険と利益をハカリにかけると利益のほうが重い、ということなのだが、その利益からは人命と子孫の健康の必要経費はひかれていないのである。… 「カネは一代、放射能は末代」である。

日本の原発危険地帯

日本の原発危険地帯

佐藤栄佐久 『知事抹殺』

 私が「法教育」の授業等でお世話になった検事さんたちからは、全く想像できないような人が特捜部にはいるのだろうか…。FUKUSHIMA原発事故を受け『知事抹殺』を読んだのだが、佐藤栄佐久氏の主張に全く誤りがないとしたのなら、何を信じたのならば良いのだろう。村木厚子元局長冤罪事件での前田特捜検事の証拠捏造を知ってから、検察に対する信頼感は瓦解している。「正義の味方」であるべき検察に何が起こっているのだろう…?
 少なくとも本書を読む限り、FUKUSHIMAの原発事故は、今回のようなマグニチュード9.0の巨大地震や未曾有の津波が襲わなくとも、近い将来起こっていたのではないのだろうか。今回の原発事故は、地震津波という「天災」と切り離して、政府および東京電力の「人災」と言うべきだろう。
 それにしても、石原慎太郎都知事とは、どのような考えをもって、発言しているのであろう。今回の大震災を「日本人のアイデンティティーは我欲。この津波をうまく利用して我欲を1回洗い落とす必要がある 。やっぱり天罰だと思う。」と言ったり、「新潟の、夜は熊しか通らない道はどこの金でできているのか」と言うことができるのだろう。


○国策である原子力発電の第一当事者であるべき国は、安全対策に何の主導権もとらない。」という「完全無責任体制」だった。事故が起きても、国にとっては東京電力関西電力など、個別電力会社の安全管理の問題であり、事故が起きた時だけ、それぞれの電力会社の呼びつけ、マスコミの前で陳謝させ、ありがたく指導する。しかし、それだけなのだ。
○地元にとって、原子炉が増えるメリットは、建設中の経済効果と雇用が増えること、自由に使えないが、国から予算が下りてくることだ。しかし、30〜40年単位で考えると、また新しく原発を作らないとやっていけなくなるということなのか。これでは、麻薬中毒者が「もっとクスリをくれ」と言っているのと同じではないか。
○日本は核不拡散の観点から、原子力発電で出るプルトニウムを持たないことになっているので、どんどんたまるプルトニウムを何としても高速増殖炉で使ってしまわなければならないという、外交上、安全保障上の焦りもあるのだろう。
○国の都合なので原発はやるが、地元が地域振興計画の柱に据えている火力発電所は凍結する。
○「有り得ないことが次々と起きる」ということは、「起こるべくして起きている」のと同じ意味なのだ、
○「東京の山手線は、新潟県水力発電所の電気で動いている」と新潟県の平山知事が、大消費地の意識改革を訴えれば、石原知事が
「新潟の、夜は熊しか通らない道はどこの金でできているのか」とうそぶくという。
○1999年の東海村JOC臨界事故を教訓に「内部申告奨励制度」が導入され、その第1号として、2000年7月に内部告発文書が経産省保安院に届いた。・・・保安院は本来すぐに立ち入り調査をして告発内容について検討すべきところをよりによって、その告発内容を、改ざん隠蔽の当事者である東京電力に口頭で商会していたのだ。「こんな告発がありましたがどうですか?」調査は東電に任せ、「報告は告発内容と一致しなかった」と口を拭ったのだ。さらに保安院は、告発者本人からの事情聴取は一度もしないまま、2000年12月、告発者の資料を東電に渡すことまでしていた。
○発電地域の住民が考えているほど、需要者である首都圏の住民は、自分の使う電気がどこでできているかに関心がない。電気代を払っておしまいなのだ。

知事抹殺 つくられた福島県汚職事件

知事抹殺 つくられた福島県汚職事件

広瀬隆『原子炉時限爆弾』

 私の中に「原発」と言ったら広瀬隆という回路が出来上がっている。たぶん、若い頃に読んだ『ジョン・ウェインはなぜ死んだか』の印象が強いのではないかと思う。ジョン・ウェインをはじめ、ゲイリー・クーパースティーブ・マックイーンヘンリー・フォンダなど、ハリウッドの強い男たちは、なぜガンとの戦いに敗れ去ったのか。ロスアラモスの核実験場との関連をたいへん興味深く読んだものである。そんな広瀬隆の本が山積みされていたので手にとった。初版は2010年8月26日であるが、今回の東日本大震災を予言していたかのようである。地図・グラフが大変豊富で説得力のある書となっている。


東海村の原子炉導入に奔走した白洲次郎
○日本では、原発震災が本当に起こった時に、テレビ局はNHKをはじめ民放も、政府や電力会社からの圧力を受けて、現地住民や国民に正しくその危険性を伝えないだろう、
○膨大な熱量を熱水として捨てている。これが温排水と呼ばれて、日本全土の海を加熱し続け、同時に沿岸の生物を根絶やしにしている。
○2010年6月17日に、東京電力福島第一原子力発電所二号機で、電源喪失事故が起こり、あわやメルトダウンに突入かという重大事故が発生したのだ。日本のマスコミは、20年前であれば、すべての新聞とテレビが大々的に報道しただろうが、この時は南アフリカのワールドカップ一色で、報道人として国民を守る責務を放棄して、この深刻な事故についてほとんど無報道だった。
○日本の原発で耐震性が最も低い270ガルで建設された福島第一原子力発電所が6基、そのすぐ南の福島第一原子力発電所が4基、合計10基という巨大原発基地となって、首都圏に電力を送っているのだ。
○日本の電力会社は、地盤が強固な土地を選んで原発を建設するのではなく、原子力発電所の建設地を選択したあと、その「安全性」を証明するためにアリバイづくりの地質調査をする、という逆の手順を取ってきた。
○北海道幌延町が日本の最北端で、青森県六ヶ所村が本州最北端で、鹿児島県南大隅町が九州最南端である。そこが最終処分場の候補地というわけだ。東京・名古屋・大阪・福岡の大都市から遠いところが候補地とは、何を意味しているのか。そこに事故があっても、日本の都会人は自分だけは助かると思っているようだ。
○子供たちの世代に対して、「その危険性は分かっていた」という事実の釈明は、通らない
○ここ十数年の日本で、大きく変わったことがある。それは、20代、30代、40代の若者と働き盛りの人たちの大半が、このような社会的問題に立ち上がって、活動しなくなったことである。
原子炉時限爆弾

原子炉時限爆弾

今、わたしにできること

VegeetaM2011-04-30

 大型連休を利用して元同僚の宮城県の実家をベースにして災害ボランティア活動に参加した。まず、東松島市の野蒜海岸で線香をあげさせていただいたのち石巻市へと向かった。三陸海岸での釣りが趣味だったという地元の方や新幹線で仙台まで来てレンタカーで現地へ駆けつけた若者と共に作業にあたった。津波に襲われた家屋の床板を剥がし、縁の下に溜まった汚泥を除去したり、その汚泥を土嚢に詰める作業などに従事した。時には寡黙で圧倒的な体力を有する自衛隊員の力も借りて作業を行った。
 新聞やTVで見知っていた光景ではあったが、実際自分の目で見てみると、その被害の甚大さに言葉を失った。新聞やTVからは感じ取ることができないのが、その臭いである。海岸から一キロ以上も離れた民家の床下から腐った魚が発見された時の臭いはひときわ強烈であった。

辻信一監修 『ハチドリのひとしずく』

 今春、自分へのお年玉としてWedgwoodの『ハミングバード』を購入することとした。
浅草:合羽橋道具街で注文したものが届いた。
紅茶を入れ、最初に手にした本は、もちろん『ハチドリのひとしずく
これから、「今、わたしにできること」を一つひとつ実践していきたい。


森が燃えていました
森の生きものたちは われ先にと逃げていきました
でもクリキンディという名のハチドリだけは
いったりきたり くちばしで
水のしずくを一滴ずつ運んでは
火の上に落としていきます
動物たちがそれを見て
「そんなことをして いったい何になるんだ」
といって笑います
クリキンディは こう答えました
「わたしは、わたしにできることをしているだけ」

ハチドリのひとしずく いま、私にできること

ハチドリのひとしずく いま、私にできること

長谷部誠『心を整える』

 以前から、サッカー日本代表キャプテン:長谷部誠のインタビューに感心していた。いつも落ち着いて語彙も豊富なので、どうしてだろう…?と不思議に思っていた。図書館司書のW先生からスポーツ雑誌「Number」『アスリートの本棚』を紹介されたのは、昨年秋であったろうか…? ワールドカップの時に読んでいたのが『ニーチェの言葉』であったとはとても意外に感じたことを覚えている。
 そんな長谷部が本を出したという。『心を整える‐勝利をたぐり寄せるための56の習慣‐』 タイトルを聞いただけでは、何だ…、もっとカッコいいタイトルをつければいいのにと思った。しかし、読んでみるとコレがなかなかいいのだ。現にこうしてブログに読書ノートをつけさせようと思わせたのだから…。目次の項目を拾っただけでも「整理整頓は心の掃除に通じる」「マイナス発言は自分を後退させる」「頑張っている人の姿を目に焼きつける」「群れない」「運とは口説くもの」「読書は自分の考えを進化させてくれる」「遅刻が努力を無駄にする」「自分の名前に誇りをもつ」「正論を振りかざさない」「笑顔の連鎖を巻き起こす」


○愚痴だけでなく、負の言葉はすべて、現状をとらえる力を鈍らせてしまい、自分で自分の心を乱してしまう。心を正しく整えるためにも愚痴は必要ない。
○自分が発する言葉というのは自分自身に語りかけているところがある。口にした言葉は自分の耳を通じて、自分の心に届く。
○読書を続けてきたことによって、昔よりもボキャブラリーや質問に対する瞬発力が上がっているかもしれない。
○その日その日の愉しみを優先するのではなく、先を見据えることが必要だ。周囲の様子、傾向、失敗を自分に置き換えて、自分の未来を想像することも必要だと思う。

心を整える。 勝利をたぐり寄せるための56の習慣

心を整える。 勝利をたぐり寄せるための56の習慣