佐藤栄佐久 『知事抹殺』

 私が「法教育」の授業等でお世話になった検事さんたちからは、全く想像できないような人が特捜部にはいるのだろうか…。FUKUSHIMA原発事故を受け『知事抹殺』を読んだのだが、佐藤栄佐久氏の主張に全く誤りがないとしたのなら、何を信じたのならば良いのだろう。村木厚子元局長冤罪事件での前田特捜検事の証拠捏造を知ってから、検察に対する信頼感は瓦解している。「正義の味方」であるべき検察に何が起こっているのだろう…?
 少なくとも本書を読む限り、FUKUSHIMAの原発事故は、今回のようなマグニチュード9.0の巨大地震や未曾有の津波が襲わなくとも、近い将来起こっていたのではないのだろうか。今回の原発事故は、地震津波という「天災」と切り離して、政府および東京電力の「人災」と言うべきだろう。
 それにしても、石原慎太郎都知事とは、どのような考えをもって、発言しているのであろう。今回の大震災を「日本人のアイデンティティーは我欲。この津波をうまく利用して我欲を1回洗い落とす必要がある 。やっぱり天罰だと思う。」と言ったり、「新潟の、夜は熊しか通らない道はどこの金でできているのか」と言うことができるのだろう。


○国策である原子力発電の第一当事者であるべき国は、安全対策に何の主導権もとらない。」という「完全無責任体制」だった。事故が起きても、国にとっては東京電力関西電力など、個別電力会社の安全管理の問題であり、事故が起きた時だけ、それぞれの電力会社の呼びつけ、マスコミの前で陳謝させ、ありがたく指導する。しかし、それだけなのだ。
○地元にとって、原子炉が増えるメリットは、建設中の経済効果と雇用が増えること、自由に使えないが、国から予算が下りてくることだ。しかし、30〜40年単位で考えると、また新しく原発を作らないとやっていけなくなるということなのか。これでは、麻薬中毒者が「もっとクスリをくれ」と言っているのと同じではないか。
○日本は核不拡散の観点から、原子力発電で出るプルトニウムを持たないことになっているので、どんどんたまるプルトニウムを何としても高速増殖炉で使ってしまわなければならないという、外交上、安全保障上の焦りもあるのだろう。
○国の都合なので原発はやるが、地元が地域振興計画の柱に据えている火力発電所は凍結する。
○「有り得ないことが次々と起きる」ということは、「起こるべくして起きている」のと同じ意味なのだ、
○「東京の山手線は、新潟県水力発電所の電気で動いている」と新潟県の平山知事が、大消費地の意識改革を訴えれば、石原知事が
「新潟の、夜は熊しか通らない道はどこの金でできているのか」とうそぶくという。
○1999年の東海村JOC臨界事故を教訓に「内部申告奨励制度」が導入され、その第1号として、2000年7月に内部告発文書が経産省保安院に届いた。・・・保安院は本来すぐに立ち入り調査をして告発内容について検討すべきところをよりによって、その告発内容を、改ざん隠蔽の当事者である東京電力に口頭で商会していたのだ。「こんな告発がありましたがどうですか?」調査は東電に任せ、「報告は告発内容と一致しなかった」と口を拭ったのだ。さらに保安院は、告発者本人からの事情聴取は一度もしないまま、2000年12月、告発者の資料を東電に渡すことまでしていた。
○発電地域の住民が考えているほど、需要者である首都圏の住民は、自分の使う電気がどこでできているかに関心がない。電気代を払っておしまいなのだ。

知事抹殺 つくられた福島県汚職事件

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