ヒルズ黙示録 検証・ライブドア 大鹿靖明
4月27日、夕食時、ヘリコプターのエンジン音がウルサイ。子どもが「今日は何でこんなにヘリコプターが飛んでウルサイの?」と聞く。「ホリエモンが出てくるからだよ」と答える。その時、テレビの画面にニュース速報が流れた。「堀江貴文 保釈」と。子ども「お父さん、ホリエモンって、あの小菅の刑務所にいるんでしょ。見に行こうよ。」私「行ってみるか?」妻「野次馬根性旺盛なんだから・・・」私「これも社会勉強だよ。よし早く夕飯食べろ、出発だ!」
いつもテレビに映る東京拘置所の通用門前は、想像していたよりも人が少ない。
テレビカメラ(某国営放送)を構えている人に聞くと、ガキ連れて野次馬やってんじゃねーよという感じいっぱいに「入る時はコッチだけど、出る時はムコウなんだよ」私「あと何分くらいで出てくるんですかね?」カメラマン「そんなの、わかんねーよ。俺たちだって・・・」「失礼しました。」
小雨も降ってきたし明日は学校もあるので「帰ろうか?」と聞くと「ここまで粘ったのに、今、帰ったらバカだよ。明日ちゃんと朝起きるから、もうちょっと」
高速道路下で待つこと1時間数十分、ムコウ側で眩しいくらいのライトが光っている。ゆっくりゆっくりワンボックスカーがやってきた。ちょうど信号が赤になり一時停止した。「2列目、2列目、いた、いた、ホリエモン」と叫んだ。「これまでテレビで見てきた時とは違い、憑き物が落ちたようにさわやかな顔をしている。言われているほど悪い奴ではないのではないか」と感じた。
こんな堀江氏に対する印象をもって、本書を読んだせいか、次のような文章が気になった。
○地検特捜部はこのところ、UFJの銀行法違反(検査忌避)、カネボウの粉飾決算など金融庁や産業再生機構からの「もらいネタ」事件が多く、精彩さを欠いていた。テレビですっかり人気者になっていた堀江を挙げたい功名心があったに違いない。
○2002年5月に東京地検特捜部に逮捕された経験をもつ外務省のラスプーチン、佐藤優(起訴休職中外務事務官)も地検の元特捜部長と同じような時代観をもったうえで、この事件の捜査を「国策捜査」ととらえている。佐藤によれば、国策捜査は「時代のけじめとして検察が象徴的に作り出した事件」と規定している。佐藤は著書『国家の罠』の中で、取り調べに当たった西村尚芳検事からこう言われたことを記している。「これは『国策捜査』なんだから。あなたが捕まった理由は簡単。(中略)国策捜査は『時代のけじめ』をつけるために必要なんです。時代を転換するために、何か象徴的な事件を作り出して、それを断罪するのです」ライブドア事件は、規制緩和が進んだ新自由主義の行き過ぎを是正するうえで、起きるべくして起きた事件といえる。
- 作者: 大鹿靖明
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 2006/04
- メディア: 単行本
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