なぜ同胞を殺したのか 井上恭介・藤原超

なぜ同胞を殺したのか―ポル・ポト 堕ちたユートピアの夢

なぜ同胞を殺したのか―ポル・ポト 堕ちたユートピアの夢

 明日から2日間、JCBLの「地雷問題・語り部ボランティア養成講座」に参加するにあたり、改めてカンボジアを見つめてみようと思い、書名に惹かれ『なぜ同胞を殺したのか』を読んだ。
 ポル・ポトが問われる罪として、1948年の国連総会で採択された「ジェノサイド(genocide)」条約が適用されるか否かの議論がある。同じカンボジアの同胞を殺害したことがジェノサイドにあたるか否か。ルワンダユーゴスラビアとは違うという議論だ。
 では、なぜポル・ポトは同胞を殺したのか? 国際法廷を前に、加害者であるかつてのポル・ポト派は、みなその罪をポル・ポトに押し付けようとしている。ポル・ポト亡き今、その真相に迫ることは大変に難しい。なぜ…? なぜ…? と空しく「なぜ…?」だけが残った。 筆者の次の言葉が胸に刺さった。

 カンボジアを内戦に引きずり込んだ上に、ポル・ポト派の延命に手を貸してきた国際社会が、今になってポル・ポト政権幹部の責任追及をカンボジア政府に「強制」する資格などないだろう。