今年度の「日本カリキュラム学会」の課題研究で初めて鍋島先生に出会った。パワーポイントを使って大変わかりやすいプレゼンテーションをされた。その縁で、今回『効果のある学校』を読むこととした。序章から「いいぞ!その通りだ!」と思う文章に出会える。


記者たちは文部科学省やその関連機関、著名な研究者に取材し、「百マス計算」などで目立った学校や教員の元を訪れるが、決して家庭や地域の実情をその目で確認しようとはしない。今報道すべきは家庭や地域がもはや安定した子育ての場とはなっていない状況である。家庭や地域の教育力が崩壊していく一方で、学習指導要領の「改善」がどれほどの学力向上につながるのだろうか。
 本当に公立中学校の教師をしていて感じることは「子どもの荒れ」以上に深刻な「家庭の荒れ」である。子どもは家庭の犠牲とされている。しかし、家庭はそのことを考えようともしないドツボにはまったような状況と化している。

学習意欲の低下、学級崩壊などによって指導により多くの時間が必要となっている状況の中で授業時間数は削減された。給食費や修学旅行用積み立ての未払いが増えている中で(中略)「子どもを家庭に返し、家庭の教育力の向上を」というスローガンが叫ばれる。
 鍋島先生の凄い所は、これらの言説をもって、これほど家庭が崩壊しているのだから学校は無力なのだと結論づけるのではなく、「効果のある学校論」を提示するのである。「エフェクティブ・スクール論」の特徴は、性や人種・民族・社会階層といった児童・生徒の学力形成に不利に働く家庭背景要因を、学校を改革することによって乗り越えることができるとするのである。さあ、本校はどこから手をつけるべきであるか・・・?

効果のある学校―学力不平等を乗り越える教育