今日、卒業生の「成人を祝う会」に招待された。
サプライズゲストだということであった。
 5年前、4クラス133名の卒業生を送り出したにもかかわらず、
「荒れる○○中学」という風評と学校選択自由の荒波を受け
1クラス24名に激減した原因をつくった学年である。
当時、地域から私たち教員は「給料泥棒」と後ろ指を差されたものだ。
 彼らは「○○中一家」と称し、
さまざまな問題行動を引き起こした。
まだ時効を迎えていない事件等もあり詳細は語れない。
2泊3日の修学旅行で、私は2時間、若手教師は3分間しか
ベッドに横になることができなかった学年である。
この一家の首領クラス4名が幹事を引き受け、
今晩の「成人を祝う会」が挙行された。
133名のうち80名を超える卒業生が参加した。
ビンゴあり、漫才あり、歌あり
「○○中の友情よ永遠に」と染め抜いた
ブルーのタオルのお土産と趣向も凝らされていた。

 彼らの「成人を祝う会」であるにもかかわらず、
全員が静粛に着席している中、私たち教師が拍手をもって迎えられた。
小泉純一郎氏ではないが「感動した!」
「ありがとう!」という言葉しか思い浮かばなかった。
広島で被爆者の方の講演を聞く際に、
いくら「席に着け!」と言ってもなかなか座らず、
「静粛に!」と言ってもなかなかおしゃべりをやめなかった彼らが・・・
今更ながらに、あの5年前は何だったのだろうと思った。

 と同時に、沖縄では今年も成人式が荒れたという。
なぜ、沖縄では成人式が荒れるのだろうと思った。
評論家は失業率との関連を云々するが・・・
今日集まった卒業生の中にも「職がないんだ」とボヤく者が多かった。
なぜ・・・沖縄・・・

 あんなに荒れた「○○中一家」と称した卒業生は
酒宴であるにもかかわらず、誰一人として酒に溺れる者はいなかった。
暴れる者もいなかった。
 式典では、金髪に金色の羽織・袴姿で最大級に目立ち、
仲間の迷子ステーション的な役割を果たした者もいた。
彼は「今、俺、現場を任されているんだ。監督なんだ。」と
誇らしげに語っていた。
 そして、幹事は
「先生、迷惑かけたな」
「先生、来てくれないかと思ったよ」と
こんな時、教師をやっていて良かったなと
思う瞬間なのかもしれないと改めて思った。

 最後に三三七拍子に指名された私は言った。
「迷惑をかけたのは私たち教師も同じだ。
 私たちの指導力不足で、
 不本意な中学校生活を過ごした人もいるだろう。
 今も忸怩たるものがある。
 でも、今日、素晴らしい会に招待していただき
 感謝の気持ちでいっぱいだ。ありがとう。

 第29回○○中 卒業生諸君の健康と
 益々の活躍を祈念して・・・」

 アトのほうは、込み上げる感動で声が裏返っていた。

 でも・・・でも・・・
 あの5年前は何だったのだろう・・・?
 と改めて思う。