運動会の不審者兼駐輪対策をした折に発せられた「うるせぇーな。轢き殺すぞ!」から立ち直れない。もし、あの時・・・と想像してみる。
 そんな折、机上に積読されていた日垣隆氏の『そして殺人者は野に放たれる』が眼に入った。あまりに衝撃的な事件とその後の加害者の処遇にコトバを失う。何件かは私も聞き覚えのある事件が含まれていた。「本当に…? ウソでしょ…?」という刑法第39条の悪しき拡大解釈のオンパレードであった。本ブログを読まれた方には、ぜひご一読願いたいと思う。
 本文から引用する。


□ 「ほとんど記憶がない」「異常な泥酔状態にあった」「覚醒剤を打っていた」ことが罪科の加重ではなく、逆に日本では無罪や刑減軽の理由になる。
□ 未だ日本には、凶悪犯罪者を心神喪失により無罪にする法(刑法39条1項)はあっても、心神喪失により不起訴あるいは無罪にした凶悪犯罪者を処遇する施設が1つもない。
□ 精神鑑定は、科学的検証に全く耐ええない。結論は専門家によって異なる。あるいは学派によって決められている。精神鑑定は科学ではなく、証拠でもなく、推測に基づく意見にすぎない。 
□ 被告弁護側が心神喪失(異常)を、検察側が完全責任能力(正常)を主張し、裁判所がその中間(心神耗弱)をとる、という実に安易で退廃的な判決が頻出する。
□ 39条が廃止されてしまうと、多数の凶悪犯罪者を無罪化する”弁護士のお仕事”はありえなくなる。日弁連は、国民の安全より会員の”お仕事”を優先したのである。
□ 日本の司法精神医学や精神鑑定では、ただの酔っ払いを単純酩酊。それ以上のものを異常酩酊とし、後者(異常酩酊)をさらに2種に分け、暴力的迷走が生じると複雑酩酊(心神耗弱として刑を半減)、妄想や幻覚などが伴うと病的酩酊(心神喪失として不起訴または無罪)とする説が現在も採用され続けている。
□ 「殺人プラス自殺」以外の何ものでもないにもかかわらず、「無理心中」なる翻訳不能な日本語で、国内的には了解されてきた。
□ 被害者に対して「意思決定」により残虐な行為をおかした者が、なぜ国家によって「意思決定ができない者」とレッテルを貼られて無罪放免とされるのか。
 少々過激かなと思われる表現も散見されるが、筆者の弟さんが理不尽に殺され、お兄さんが長く精神分裂病に罹患したままという文があとがきに記されている。
 一人ひとりが我が事として考えるべきではないか。もし、我が子が被害者となり、加害者が精神障害犯罪者ということで、不起訴および無罪となったことを考えると…。それも加害者自身の意思で大量飲酒もしくは覚醒剤を乱用していたとしたら…。私は我が子が殺される前に刑法第39条第1項の削除を声を大にして叫びたい。
そして殺人者は野に放たれる